クラフト・エヴィング商會
本なのか店なのかわかりにくいこの名前は、吉田篤弘氏と吉田浩美氏二人の創作ユニットで、本を書いたり装丁を行ったりしている。
最初に出会ったのは高校生のころ、図書館で変わったタイトルの本を見つけた。見れば、作者名も何やらよくわからない。
ページをめくってみると、小説よりエッセイより写真が多い。しかし、写真集やカタログのように写真を見せる本でもなく、画像に合わせた短編などもある。
よくわからない本だが、薄いし早く読み終わりそうなのでついでに借りていこう、と軽い気持ちで借りた。
- 作者: クラフト・エヴィング商會,坂本真典
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2004/05/26
- メディア: 単行本
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読んでみると、雑貨の詰め合わせのような、短編と写真を味わう本だったが、作者の言葉遣いがとても気に入った。
そこで、幸運にも図書館にはクラフト・エヴィング商會の本や、クラフト・エヴィング商會商會の一員である吉田篤弘氏の本があったため、手当たり次第に読んでいくことにした。
そこで、一冊の本に出会った。
この本は「祖父の旅行かばんから出てきたアゾットという国の旅行記」である。いくつかのエリアに区切られていて、エリアごとに名物の酒が作られており、祖父が持ち帰った酒瓶や建物のパンフレットなどはカラー写真で大きく載っている。
ネタバレはあまりしたくないので詳しく話せないが、この本の何重もの仕掛けにとても驚かされ、またアゾットからの土産がとても綺麗で、ほしいと思うものばかりだった。
なお、文庫本も出ているが色とりどりのアゾット土産が見たいなら単行本の方が良い。
この本は何度引っ越しても必ず持ち込んでいる。
クラフト・エヴィング商會は作中に登場する小道具を自分たちで作成していることが多い。
架空の道具や、
架空の本に、
架空の職業まで作り出している。
あったらいいよね、あれば楽しいよね、と思えるものばかりだ。
また、クラフト・エヴィング商會の片翼を担っている吉田篤弘氏の小説も素晴らしい。
「つむじ風食堂の夜」は映画化もされている。
長編も書いているが、初期の頃は短編集が多かった。
彼の短編は少し変わった仕事をしている人たちの日々の生活が丁寧な文章で優しく書かれていて、私は吉田篤弘氏の本を読むと、彼らのように生きたくなる。