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成田良悟

 成田良悟との出会いは中学生の頃。

 星新一で文庫本を読むのに抵抗がなくなった私は、学校の図書館に入り浸っていた。

 星新一は好きだったが、SFというよりはミステリー小説に興味があったため、アガサ・クリスティなどミステリー作家の作品を読んでいたのだが、ある時文庫本の表紙を眺めていると、文庫本らしくないタイトルに出会った。引き抜いてみると、文庫本らしくない漫画のような表紙。

 中身を見ると、これまた文庫本らしくない砕けた文章、間に挟まる漫画のようなイラスト。たまにはこういうのもいいか、と思って借りてみた。

 それが、阿智太郎作の「僕の血を吸わないで」であった。

 

  成田良悟じゃないんかい、と思われるかもしれないが、この作品もとても面白かった。今まで触れたことのなかったギャグ調の軽い文体で、吸血鬼に好かれた主人公とのいわゆるラブコメがさくさくと読めた。

 そこからミステリー小説から、電撃文庫作品、いわゆるライトノベルにも手を伸ばすようになった。

 ライトノベルも読むようになったある日、新刊コーナーに変わったタイトルのライトノベルがあった。意味のわからない英語。表紙も、上記のライトノベルよりは実写に近く、可愛らしさはあまりなく、正直言ってちょっと近寄りがたい、という印象があった。

 しかし、それが逆に好奇心をそそった。どういう内容のものなのだろう。説明を読むと、マフィアの話のようだ。

 絶賛厨二病中だった私は、マフィアなどのアンダーグラウンドに憧れていた。ミステリー小説が好きなのもあっただろう。

 そこで、成田良悟と出会った。

 

  読んでみて、驚いた。

 底抜けに明るい泥棒バカップル。

 マフィアの三兄弟。

 マフィアではなく、カモッラの若手の青年。

 不老不死を求める老人と、その忠実な下僕であるホムンクルス

 『不老不死の酒』を中心に個性豊かなキャラクターたちそれぞれの思惑が絡み合い、重なり合い、やがてはきれいに収束する。

 とてもまとまらないであろうと思われる馬鹿騒ぎ(イタリア語でbaccanoというらしい)を綺麗にまとめるその手法を、私はバッカーノで初めて読んだ。

 イラストがリアル調であることなど気にならなくなっていた。この作風にはこの絵柄しかないとも思えた。

 なおBaccano!シリーズはアニメ化もしている。私はこずかいをはたいてDVDを買った。特典に描き下ろし小説がついていたが、今ではそれらも単行本化されている。

  映画「スナッチ」をオマージュしたOPが有名になったのを覚えている。

 

 図書館にあるBaccano!シリーズを全部読み終えた後、他の作品にも着手した。

  吸血鬼と人間が共存するドイツの島を舞台にしたステレオタイプな吸血鬼らしい能力以外の吸血鬼がたくさん出てくる「ヴぁんぷ!」シリーズ。

ヴぁんぷ! (電撃文庫)

ヴぁんぷ! (電撃文庫)

 

  池袋を舞台とした、デュラハンカラーギャングたちの恋物語が見られる「デュラララ!!」シリーズ。

  これもアニメ化されている。

デュラララ!! Blu-ray Disc BOX

デュラララ!! Blu-ray Disc BOX

 

 開発途中で捨てられた越佐大橋を舞台に、特殊能力はない(一応)「越佐大橋シリーズ」。

バウワウ!―Two Dog Night (電撃文庫)

バウワウ!―Two Dog Night (電撃文庫)

 

  どちらもどんどんと登場人物が増えているのに、ストーリーは奇跡のように破綻しない。

  短編集5656!では登場人物たちの恋愛などが垣間見えて良い。

 短編集といえば、このどこかで見たようなタイトルの短編集は、舞台は埼玉県所沢市となっているものの、魔法少女や都市伝説など、ジャンルは様々。共通点は、「針山」という普通のサラリーマンがどこかでほんのり関係しているだけ。しかし最後の書き下ろしの一遍で収録されている全ての作品のキャラクターが一同に会する所で成田節が垣間見える。

 さらに、Baccano!シリーズやヴぁんぷ!シリーズの挿絵をしているエナミカツミと、越佐大橋シリーズやデュラララ!シリーズの挿絵をしているヤスダスズヒト両氏の挿絵が見られるので少しお得感があると思う。

世界の中心、針山さん (電撃文庫)

世界の中心、針山さん (電撃文庫)

 

  現在は電撃文庫以外でも、メディアワークス文庫で作品を出したり、

 

 漫画の原作を担当していたりするが、学生時には出ていなかったのでこれらはまた別の機会に紹介する。

 それから、元々はエイプリルフールの企画であった、「Fate」シリーズの外伝的作品、偽りだらけの聖杯戦争も発行している。

 エイプリルフール企画だったため年に一度しか出版しないという制限があり、まだ完結していない。

 

 数多くの作品があるが、私が一番好きなのはやはり一番最初に読んだBaccano!シリーズだ。マフィアやカモッラが存在する世界観も好きだし、好きなキャラクターも多い。

 DSで出たゲームも未だに持っている。電車で起こる馬鹿騒ぎ、Baccano!1931に分岐を付け加えたものだ。ゲーム内のグラフィックはアニメの流用である。

  

 

 とにかく学生時代は成田良悟作品を読みまくったし、今でも新刊は買って読んでいる。

あらゆる紹介文で言われまくっているだろうが、とにかく個性のある人物を生み出すのと、人物が起こすドタバタ群像劇、それからその群像劇をまとめるのがとても上手い。

 成田良悟作品を全部読むまで死ねないと本気で思っていたし、この人の作品を読めるだけで生きる意味があると思った。尊敬する人物は?と言われたら星新一成田良悟と答えよう、と思うくらいにこじらせまくっていた。ツイッター成田良悟をフォローするために始めた。

 身体をよく壊すことがWikiにも書かれているが、どうか私が死ぬまでは生きていてほしいと思っている。